薄々気づいていた私のルームメイトとホストファミリーとの溝。今回起きた事件で、その溝とルームメイトの心の闇を垣間見たという話。海外ドラマのような展開にドッキドキでした。
事件は突然始まる・・・。
私のルームメイトは性格に問題がある。
「すごく親切でフレンドリーな日」と「何を言っても冷たくあしらわれる日」がはっきりと分かれていた。
最初の頃は私の英語がダメなんだと思った。それは自覚があったし。
でも、徐々にそれだけが問題じゃないと分かった時、今度はこの問題について一緒に暮らしてる人達に相談できないことにすごく悩んだ。
私の拙い英語で説明して「は?」ってなったら嫌だしなって。
でも、そこからまさかの逆転劇が始まりつつある。
私の英語力の低さ
私の英語のレベルは極めて低かったと思う。
Can I use bath room?(バスルーム使っていい?)
と言われているのに
Do you use bath room?(バスルーム使う?)
と言われてると思って、NOと答えては「は?」みたいな顔された。時には本当に「は?」って言われた。でもコミュニケーションとれない私が悪いからな、と思って我慢してた。
そんな悔しさもあり、私は勉強に励んだ。
そのうち仲の良いクラスメイトができ、四六時中喋ってるので英語の理解度もしゃべりも上達していった。
これは自己評価でなくホストマザーからの評価。最初の頃、私の会話はひどいものだった。でも徐々に毎日喋れるようになり
「英語上達したね」
とほめてくれたり、ある日授業が長引いてディナーの時間に間に合わないという事案が発生した時、
「授業が長引いて夕飯に間に合わない。でも夕飯食べたいからとっておいて!」
と連絡したことがあった。そして後日
「あのメールってあなたが書いたの? 完璧すぎたから他の人が書いたのかと思ったわ!」
と絶賛してくれた。
正直ライティングは楽だった。会話より考える時間あるし、考える時間さえあれば文法はそこそこ行けるのが日本人なのだ。
徐々にわかったルームメイトの本性
そんなこんなで、自分が色々わかるようになり視野が広がると、改めてルームメイトがおかしいことに気づく。
彼女は1年弱滞在しており、英語のクラスもビジネス英語上等な超上級クラス。
中級クラス以上になると日本人以外の人々は、とにかくよくしゃべる。
日本人以外のぼっちがいないのだ。
私のルームメイトをのぞいては・・・・。
学校で時々彼女を見かけたが、ほとんどの場合はぼっちなのだ。
ある時は、ぽつんと一人でスマホをいじり、あるときは一人カフェテリアでコーヒーを飲んでいる。
正直、可哀想だな、と思ったけど今までされてきた辛辣な態度を踏まえ、私はほっとくことにした。冷たい人間と思われるかもしれないが、ただでさえ孤独な初期の留学生活で彼女の態度は私から自信とやる気を奪っていったのだ。
留学生活も折り返し地点に差し掛かった頃。
私は自分の英語力が相変わらず大したことない自覚はあったが、100%正しい文法で喋らなくても、どういうポイントを抑えれば相手に伝わってコミュニケーションが図れるかはなんどなくわかっていた。
ある時、ハウスメイト(隣の部屋の子達)に
「5分後に朝食だよー」
と英語で伝えたところ
「わかったーありがとう〜!!」
とすんなり伝わった。
部屋に戻るとルームメイトが起きていたので、全く同じように
「5分後に朝食だよ〜」
と伝えたところ
「はぁぁぁ?」
と言われ私の言葉を聞かず、そそくさとキッチンに行ってしまった。
この頃には私も薄々これは私の英語力だけの問題じゃないなと思い始めていた。
根本的に人を見下して馬鹿にするルームメイトの本性がそこにあったのだ。
ルームメイトのビッチな一面
そんなことが続いたある日、隣の部屋で滞在しているハウスメイト(ドイツ人とイタリア人)達と私&ルームメイトでクラブに行くことになった。
クラブとか正直、好きじゃないから行きたくなかったがハウスメイトたちのことは好きだったから思い出作りに行くことにした。
イタリア人は本当に美しいお顔で人見知りもせず、踊りもうまい。
クラブなんて行ったことない私に、何度も指導をしてくれて上達するとめっちゃほめてくれた。根っから明るくてポジティブで本当にいい子なんだなーと感じさせる子だった。
ちなみにクラブは満員御礼というか本当に人がすごい。そしてセクハラ・・・というかボディタッチもすごい・・・。ドイツ人は真面目でそういう不埒な態度に対して本気で嫌悪を抱いている。私が変なトルコ人みたいな人に腕を引っ張られ懸命に振り払おうとしてるところを果敢にも助けてくれた。
ちなみに高校卒業したばかり。めっちゃ若いのに本当にしっかりしている。ドイツ人なのに英語の発音も美しい。ドイツ語は発音が強いので聞き取りづらい人は本当に何言ってるのかわからないのだけど彼女は完璧だった。
さて、私のルームメイトはというと知らない男と腰と腰をすり合わせ激しく踊っている。そして酒をおごってもらいいちゃいちゃ。
なお、私は既婚で私のルームメイト・イタリア人、ドイツ人もそれぞれ彼氏がいる。
午前二時、疲れ果てた私はギブアップ宣言。
四人で帰路についた・・・が、帰宅中ドイツ人が私のルームメイトを詰め始める。
ドイツ「あなたは彼氏のこと、好きじゃないの?」
ルームメイト「好きだよ」
ドイツ「じゃあなんで他の男とつるむの?」
ルームメイト「だって、(何行ってるのか不明)」
※早口でまくし立て上げるルームメイト
ちなみに、このやり取りは私が滞在中に3回は繰り広げられた。
ドイツ人の真面目さ誠実さは本当にすごい。日本人は同じこと思ってても「ま、困るの自分だし、ほっとこ・・・」で済ましてしまうから。
そんな感じで、ルームメイトへの不信感は私だけでなくハウスメイトたちにも広まっていった。
ホリデーによりパリピ化が加速
3月カトリック圏ではイースターがある。人々は2週間程度のホリデーを楽しむのだ。
長期滞在している生徒の中にはホリデーを取る人もいる。私のような短期滞在の人はとらないので関係ない話なのだが長期滞在をしている人はこのホリデーを心待ちにしている人も多い。
なぜなら、みんな祖国に帰ったり彼女や彼氏、家族を呼び寄せマルタライフをエンジョイしたり、学校の友達とヨーロッパ圏の国々へ小旅行に行くなど日頃の勉強疲れを癒やすことができるからだ。
そんな中、私のルームメイトもホリデー期間に入った。
私は彼女がホリデーをとることを知らなかったので、(というかハウスメイトも、ホストファミリーも誰も知らなかった)朝起きないルームメイトを起こしたら「ホリデーだから」と言って二度寝をし始めた。
彼女の二週間とえば、朝食を食べる→二度寝する→謎→夕飯を食べる→パーティーに行くの繰り返しだった。別に彼女がパリピ化しようがなんだろうが、私は知ったこっちゃない・・・が、通常の学校生活を送る私の生活を脅かす問題がおきる。
彼女は毎朝4時〜5時に帰宅する。それもうるさい。ドッタンバッタン・・・。まぁ広い心を持ってそれは許そう。部屋のタンスもクローゼットも立て付けが悪いのは私も知っていたから。
ところがある早朝、ついに彼女は電話をし始めるようになったのだ。
一晩なら許そう。もしかしたら極度のホームシックになり親や彼氏に電話したくなったのかもしれない。10ヶ月も滞在しているもんね。そうね、時にはそういうこともあるよね・・・・と、私の広い心で許した。
が、翌日の早朝またもや誰かに電話し始めた。
もしかして海外ではそういうのって有りなのかな?私、神経質すぎるのかな・・・?
最大限の敬意を払い、私がおかしいのかルームメイトがおかしいのか、私のルームメイトと同じ国の友達とスペイン人・メキシコ人に意見を聞いた。
「そいつヤバイね。」
「頭おかしい。次やったら言ったほうがいいよ」
「ってか何人?え?私と同じ!?ちょっと同じ国の人間として恥ずかしいわ・・・」
私は間違ってなかった。
その翌日の早朝、案の定彼女は電話し始めた。そして私はキレ気味に、でも隣のハウスメイトのことを考慮して声は抑えて
「私眠いの!静かにして!」
と言い、彼女の返事を待たずに寝返りをうって寝た。
翌日から一切電話はしなくなり、ご機嫌とりなのか何なのか知らないが、やたらフレンドリーに話しかけてくるようになった。話しかけてくる分には、冷たくあしらったりせず、ちゃんとフレンドリーに返した。
止まらないビッチ化の加速
その事件から一週間ほどして、いろんな語学学校が主催したクラブパーティーがあった。私のクラスメイトが、行こう!!と息巻いていたので彼女が行くなら、と私も行くことにした。
そのクラブが僻地にあるため、行くとなると何かしらの交通手段を使う必要があった。学校では送り迎え&クラブの入場チケット付きで10ユーロというお得なチケットを販売していたので、そのクラブパーティーがあると聞いたその日にチケットを買った。
開催前日、ディナーの時にハウスメイト達が例のクラブ行く?と聞いてきたので「クラスメイトと行くよー」と答えた。
そこで食いついてきたのがルームメイトである。彼女は私も行きたいと言い始めた。別に行きたければ行けばいいと思ったので私からは何も言わなかった。
部屋に戻り私がケータイを見ていると、ルームメイトがチケットを見せてと行ってきた。チケットをみせると
「あーこれ多分、送り迎えだけだわw多分、中に入るのにさらにお金払わないといけないよ。だとしたら、このチケット高いね。うん。高い。タクシー使ったほうがいいわ」
的なことを言っていた。
でも学校はこのチケットで入場できるって言ってたし、彼女はそもそもホリデーで学校に行っていないので説明も聞いていない。ここで反論しても議論かわしても時間の無駄なので、
「んーよくわからない」
とだけ返してチケットを回収した。
ルームメイトが私の行動に対していちいち批判してくることは今回が初めてではなかった。
2週間ほど前、私が「今度ポパイ村に行くんだー」とディナーの時言ったところ、ルームメイトが「え?何を使って行くの?」と聞いてきた。
「ここからだったら近いしバスで行くよ」と言ったところ、今度はドイツ人が「え?でも土日は混んでない?」と聞き返してきた。
ポパイ村方面のバスは確かに本数が少ない上に同じ方面に絶景スポットが他にもあるので土日は混んでる。でも急ぐ旅でもないからーと返そうと思ったら、ルームメイトがお決まりの言葉「Exactly(ドイツ人の言うとおり!)、多分すごい混んでるしうんぬん・・・」と批判。
でも私は知っていた。ルームメイトはポパイ村に行ったことないことを・・・。
話は戻り・・・
クラブパーティー当日の朝、その日は祝日の振替授業があり普段は一日3コマ授業のところ5コマ授業とかなりハードなスケジュールだった私は、せっせこ出かける準備をしていた。靴を履き替え、いよいよ出かけようとする直前に突然ベッドの中にルームメイトに呼び止められた。
ルームメイト「あなたに質問があるの。チケットがまだ売ってるか聞いてきて」
私「あーレセプションの人に聞けばいいのね?」
ルームメイト「そう。で、わかったら買ってきて」
私「じゃあ、学生証貸して(購入には学生証が必要)」
ルームメイト「なくした」
私「え?じゃあ無理だよ」
ルームメイト「はぁ・・・じゃあ売ってたら連絡して」
私「わかった」
朝から授業だった私は、時間がなくレセプションに行ったのはお昼すぎだった。そして、なんとチケットは完売していた。そんなこともあるんだねー、と思いその旨をルームメイトに連絡。
一瞬で既読がついたが
まさかの既 読 ス ル ー wwwww
正直その時点でもキレ気味だったがぐっとこらえた。
そんなこんなで長い一日を終え帰宅。が、ルームメイトがいない。
チケット売り切れてたのがショックで家出したのかな、と思ったがほどなくして帰宅。なんとドレスと高いヒールのサンダルを買ってきていた。
その時点で???だった私。するとドイツ人&イタリア人も帰宅。そしてドイツ人がチケット買えなかったと言っていた。
「私のルームメイトも買えなかったはず、なのになんでドレス?」
とハウスメイトに質問。すると彼女は驚愕の事実を伝えてきた
「なんか、友達に頼んで買ってもらったんだってー」
その時点で、かなりカチンときていたが彼女はホストマザーとハウスメイトの前では優等生だと私は思っていた。多分、私の言ってることを誰も信じてくれないなと思い、それ以上何も言わなかった。
食事も終え、一斉にみんなで出かける準備をする。ハウスメイトと私たちはお互いの部屋を行ったり来たりし、これ合う?合わない?とさながらファッションショーのようにあれこれ着替えていた。
私も化粧をし直し、髪の毛をまとめピアスを付け替えていた。すると後ろから感じる視線。振り返ると私を見つめるルームメイト。
「ネックレス貸して〜」
と言ってきた。あ、こいつ私が新しく買ったネックレス見たんだなって一瞬で気づいた。
「ごめん、ネックレス一個しかないし、これ私がつけるから無理。それか私のネコの名前が入ったこれ」
「そっか〜ネコの名前のネックレスは私のドレスにあわなさそうだからいいや。じゃピアス貸して〜」
「(あ、こいつ新しく買ったピアス見たな)この前買ったこれは今日付けるから、それ以外ならいいよ」
そんなこんなで、彼女はつけては外しつけては外しを繰り返していた。
最終的には使わなかったようだが、お礼は言われなかった。もう多くを求めるのやめようと思った。
いざ会場に付き、私はクラスメイトにすべてを話し慰められた。
友達のいないルームメイトは何回か私のところに来たが、私がクラスメイトとばかり話していると去っていった。彼女はハウスメイトのイタリア人といたが、その後途中途中で見かけた彼女は相変わらず男といちゃついて、男に酒をおごってもらっていた。
ちなみに、男たちは度々酒を勧めてくる。が、これは下心。というわけでクラスメイトと私は他の男が声をかけてきても無視。腕をひっぱってきても無視の姿勢を貫いた。懸命な彼らの姿を見て私たちは「奴らの脳は頭じゃなくて下半身だよね」と笑いながら話していた。
やがて迎えの時間。ハウスメイトのイタリア人とドイツ人、私そしてクラスメイトの四人は無事乗り込んだ。
「今日は一日ハードすぎたね。明日はゆっくりしよー!」と意気揚々と話す私とクラスメイト。楽しい時間はあっという間ですぐに学校に到着。
クラスメイトは家が遠いのでタクシーで帰り、ハウスメイトのイタリア人は夜の街へ。私とドイツ人は帰ろう〜と歩き始めたその時、もう一台のバスからルームメイトが降りてきた。彼女は知らない男に支えられながら歩いてる。
そう、高すぎるヒールで足が痛くなりこれ以上歩けないと言っているのだ。
「お願い、お願いだからタクシーで帰ろう・・・!」
懇願するルームメイト。私は何があっても断ろうと思っていたが、私が言うよりも先にドイツ人が言った「たった10分の距離で何言ってんの?我慢しなよ。10分なんだから」と一蹴した。
支えてる男は「大丈夫?俺の靴下はく?」と彼女に聞いていたが、それに対してもドイツ人は「平気だから。歩けるでしょ。ほら行こう!!」とそそくさと歩き始めた。彼女は、もう無理!!!と言って裸足で歩き始めた。正直、マルタの道は汚い。犬のうんこはその辺に落ちてるしケチャップが爆発した後みたいなエリア(何が起きたかは知らない)は誰にも掃除されず一週間はケチャップ臭い道のままだった。そんな道を裸足で歩くと言ってるのだ。
ルームメイトは死ぬほどゆっくり歩いていたので常に私達の20メートル後ろを歩いていた。ドイツ人と私は、雑談をしながら歩き時々振り返っては彼女の生存を確認していた。
何度目に振り返った時だろうか。ルームメイトと私達の距離は30メートル以上離れていたのでしばらく立ち止まって待っていた。そして、おもむろにドイツ人は私に言った。
「あなたのルームメイト24歳よね?あんな高いヒールはいて踊ったら足が痛くなることなんて私でもわかるよ、なんでそんなこともわからないのかな」
「本当にね。私も出かける前からそう思ってたよ」
私達が呆れトークをしている間にルームメイトが10メートル圏内まで近づいてきた。
「あとちょっとだから、頑張って。」とエールを送るドイツ人。この子は若いのに本当に偉いなー、私だったらほっとくなーって思った矢先、追撃
「これに懲りたら、こんな高いヒールはいてクラブに行くのはやめることね。わかったでしょ?学んだでしょ?」
わーお。。流石のルームメイトも落ち込むだろ、もう少し優しい言い回しに・・・と思った私は甘すぎるのだと次の瞬間に確信する。
「これ、高いヒールじゃないから。ってかハイヒールじゃないし・・・云々」
こいつはもう手に負えない。ドイツ人も何度か言い返していたが無意味だと悟ると首を左右に振り、そそくさと歩き始めた。
私達が家のエントランスに入って待っていると「待ってよ〜」と被害者ヅラしたルームメイトがはいってきた。帰宅し、私が洗濯物を片付けたりしていると、早くシャワーを浴びたいのに汚い足をなかなか洗いにいかないルームメイトにしびれを切らしたハウスメイトが「早く足洗って!」と怒っていた。
ルームメイトがおかしいことが周りに伝わり始めた瞬間だと思った。
警察に保護され病院へ搬送
金曜日、私はクラスメイトと飲みに言っていた。
学校の評価制度に対する不満を話したり、ドイツ人男性の素晴らしさについて語り合っていた。
私たちお得であることが大好き。
飲みに行く日はハッピーアワーが使える早い時間から飲みに行き、23時には帰宅する。(と言っても4時間以上は何かしら喋り続けてる・・・)
当日も適度にお酒を楽しみ、良い気持ちで帰宅。すると、ルームメイトがベッドでくつろいでいた。
金曜日なのに珍しいなと思った。
挨拶もそこそこに、さっさとシャワーを浴びて寝ようと風呂仕度をしていると突然
「何か食べるもの持ってない・・・?」
と聞いてきた。
ちょうど、消費に困っていたお菓子とフリーズドライの日本食があったので全部あげた。なんせ、私は一週間後に旅立つ。スーツケースを少しでも開けたかった。
「これとこれとこれね、はい。じゃあシャワー浴びてくるからバイバーイ」
会話もそこそこに、そそくさとシャワーを浴び部屋に戻ると出かける準備をしているルームメイト。あ、やっぱ出かけるんだと思った。
「私、すごいお腹空いてたみたい。もらったお菓子全部食べちゃった。今日の夕飯少なすぎたんだもん・・・」
あーこいつ文句ばっかりだなって思った。ホストマザーは本当に親切で優しいのにこいつ最低だな思う。
「え!?全部食べたの!?それは食べ過ぎだよ。あなたにはエクササイズが必要!はい、いってらっしゃーい。ばいばーい」
私がホストマザーの愚痴を聞いてくれないとわかると、彼女は早々に去った。
ホストマザーは典型的なTHEお母さんという感じで、愚痴も多いけどすごく良い人だった。そんなホストマザーの悪口を度々言うルームメイトが信じられなかった。
ルームメイトはホストマザーの前では本当に良い子ちゃんだった。何かあればリアクションをし何かとホストファミリーについてほめた。
ただ、どうしても違和感というか長期滞在している割にはホストファミリーとルームメイトの間の関係はどことなくぎこちない気はしていた。外国人はリアクションが確かに大げさだなって思うことはある。ただ、彼女のリアクションって毎回嘘くさいんだよなーと思っていた。
そして思うことはいくつかあった。ホストマザーの孫に元気な男の子がいる。すごく可愛くて私は好きだ。彼は長期滞在している彼女より最近来た私の方に懐いていた。そしてある日、私に会うために部屋に来てくれたのだ。しかも、一緒に寝る〜と布団に入ってくる。
なんて可愛いんだ・・・! 嬉しくて一緒に遊ぼうとしたその時、表情を失ったルームメイトがこちらを見てきた。
「え? なに?」
次の瞬間彼女は男の子を抱き上げ、「ここで遊ぶとお母さんに怒られるからねー」と言ってリビングに戻した。戻ってくると真面目な顔して「一回でもここで遊んであげたら、何度もきちゃうでしょ。そういうのやめて、ここはあなただけの部屋じゃないから」と言い放った。
あ、こいつ今までホストマザーの前では「How cute!!!!!!」とか言ってたけど全部嘘なんだな。と思った瞬間だった。
ちなみにハウスメイトのイタリア人は子供が好きなので、その一件以来、男の子と私とイタリア人の三人でハウスメイトの部屋で遊ぶようにした。もちろん、彼女が言った「お母さんに怒られる」は嘘だった模様。むしろ、お母さんは私達に気を使って「邪魔じゃない?大丈夫?」と聞きに来てくれ、私達が問題ないと答えると、嬉しそうに笑っていた。
また、ある時ホストファミリーが飼ってる犬が部屋へやってきて粗相をしてしまった。まぁ動物だし私もネコ飼ってるからゲボ地雷によく引っかかるので仕方ないなーくらいの気持ちだった。
が、彼女は怒り狂う。「なんで!?誰がドア開けっ放しにしたの!?ありえない。臭い・・・!」吹き終わった後のフローリングに消毒用のアルコールを撒き散らしていた。
別にそこまで怒るほどのことじゃないのに、とにかく過剰に怒り狂う。
そんな彼女はネコは好きらしく、ネコ良いよねとよく話しかけてくる。
多分、彼女は動物を飼ったことがないんだな、と思った。動物は可愛いけどウンコするしオシッコだって臭いし病院にかかればお金かかるし・・・。でもそんな大変さに変えがたい癒やしをくれる。ペットとはそういうもの。
彼女がネコを飼ったらオシッコが臭いからという理由で捨てかねないな・・と思った。
そんな各方面に問題があるルームメイトだが、その日ついに帰宅しなかった。翌朝、朝食を食べにキッチンへ行くと土曜日なのに朝から洋服に着替えてるホストマザーがいた。そして私に「ルームメイト帰ってきた?」と聞いてきた。
「ルームメイトは昨日から帰ってきてないよ。何があったのかは知らない」
ルームメイトはクラブに行く時ケータイを持っていかない。だから確認のしようがないのだ。
「何があったかは知ってるのよ。帰ってきたかどうかが知りたくて・・・」
頭を抱えるホストマザー。
「何があったの・・・?」
私が尋ねると丁度ハウスメイトのイタリア人もやってきた。とりあえず、二人で席に付きトーストを待つ。するとホストマザーが声を潜め話し始めた。
「昨晩、どうやら飲み過ぎたみたいでね。クラブで倒れてるところを周りの人が発見して警察に通報したのよ。それで、今は病院にいるの」
顔を見合わせる私とイタリア人。さらにホストマザーは続けた。
「でも、これ彼女がこの家に来てから二回目なのよ」
あーなるほど。すべての辻褄があった。ホストマザーは本当はルームメイトの問題点について全部気づいていた。だからルームメイトとホストファミリーは余所余所しかったのだ。でもそれを言うとルームメイト、ハウスメイト同士の関係性が悪くなる。だから彼女は今までそれを伏せていたのだ。もちろん、彼女はみなまで語らない。でも今起きた問題については話す。そして最後に「あなたたちも気をつけてね」と言った。
休みの日は大抵、ゆっくり過ごすことが多いがその日は朝の6時から警察・学校から電話があって大変だったらしい。本人からの連絡はないとのこと。
その日、私は出かける用事があったのだが出かけるまでに何度もホストマザーが部屋にやってきて、ルームメイトが帰ってきたか確認していた。
信頼回復不能。そして天罰
さて、私が出先から帰宅すると彼女は寝ていた。そりゃそうだ。元気に歩いていたら皆から質問攻めにされるだろう。私は何も言わず荷物を置いてディナーを食べにキッチンへ向かった。イタリア人・ドイツ人も同様にやってきた。
しかし、ルームメイトはやってこない・・・。
その間にホストマザーは今回の件を改めて伝えたうえで「この件は学校の先生達に伝わっているし・・・(よくわからない話)・・・あの子は学校に居づらいだろうけど、幸いなことにあと二週間しか滞在しないからね」と言っていた。
それからしばらくすると足音が聞こえてくる。
「彼女が来るから、この話は終わりね」
何事もなく夕飯を食べ始める私達。ただ空気は重い・・・そしてルームメイトは何食わぬ顔でやってきたので出方が全くわからなかった。でもしばらく放っておくと普通に談笑している。ホストマザーの話しぶりだと、今回迷惑かけたことについて謝罪はしていないようだった。
楽しく雑談していると、ホストマザーが突然切り出した。
「さて、ちょっといくつか質問したいのだけど、いいかしら?昨日は誰といたの?」
静まり返るキッチン。
「友達の○○と○○と・・・・」
するとドイツ人が言った
「その人たちは本当に友達なの!?」
ここでドイツ人とルームメイトが言い合う。正直何言ってるんのか良くわからないけど、真面目なドイツ人からしたら彼女の不誠実さは我慢ならなかったんだろうなと思った。
終わらない議論。今日のディナーやべぇ・・・!と思いながらピクルスをほうばる私。
結局何を言ってもルームメイトは言い訳ばかりだった。そんな彼女を見かねたホストマザーが言った。
「あのね。あなた本当に全部覚えてるの?あなたを発見したの誰か知ってる?あなたの友達なんで周りにいなかったの。クラブに来ていた通行人が発見して警察に通報したの。」
さっきまでの勢いはどこへやら・・・。押し黙るルームメイト。
「あなたのことを助けないで危ないとこに放ったらかしにする、そんなファ●キンな友達なんか縁を切りな」
ルームメイトは何も言わなかった。
重い空気がのしかかるキッチン。そこへたまたま遊びに来ていたホストマザーの孫(女の子)が登場。空気は和み、ホストマザーもそれ以上追求しなかった。
気まずそうなルームメイトを見かねてイタリア人が言った。
「いい?これからはちゃんと気をつけようね!本当に危ないんだからね・・・!」
イタリア人はカラッとした性格で困ってる人を放っておけないタイプなんだと思う。20歳の女の子に諭される24歳。だが、案の定彼女はそれに気を良くしたのか、その後はケロッとしていた。
そして、あっさり元に戻ってるルームメイトを見てバカは死ななきゃ治らないだなって思った。
夕飯が終わり、部屋に戻る。そしてドアを開けた瞬間びっくりした。ホストファミリーのワンコが部屋にいたのだ。思わず日本語で「わぁ!!びっくりしたぁ!!!」と叫ぶ私。
そしてワンコの姿を見た途端部屋に駆け込むルームメイト。
「絶対どっかにおしっこされた・・・!絶対・・・!」
血眼になってチェックするルームメイト。多分、ちょっと潔癖なんだなと思った。私が自分のベッドに戻ろうとしたその時、おしっこは発見された。
彼女のベッドカバーにしっかりとマーキングしていたのだ。
オーマイガ!!を繰り返すルームメイト。正直ワンコGJだと思った。
「あー本当だ。OK、私ホストマザーよんでくるね〜」
それを言うと、「え?本当?」と言ってすぐにモップを持ってやってきたホストマザー。
「ワンコは男の子だから女の子の匂いがするとマーキングしちゃうのね〜」
と言いながら掃除してベッドカバーを回収して出ていった。
ちなみに、「友達がいない」ことが露呈したことを恥じてるのか、いつもは動画見て笑ってるだけなのに、この日はやたらいろんな人に電話している。これは私に対して「友達がいるよ」というアピールなのだろうか。それは謎に包まれたままだ。
だって私は部屋に戻ってから音楽を聞きながら、ずっとこの日記を書いているのだから。